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この頃の消費者にとって、クルマはもはや、単なる移動の手段ではなくなっています。最近のドライバーがクルマに強く求めているのはは、もっと多くの安全機能や、多彩なインフォテインメントメニュー、自分好みの運転席周りのカスタマイズなどです。また、コネクティビティの点でも、今のクルマ、中でも電気自動車 (EV) は、航続距離の関係で充電ステーション情報が必須なこともあり、周囲環境との接続の必要性の度合いが高まっています。
ところで、最近まで、車載機能は機能別に制御を担当するエレクトロニック・コントロール・ユニット (ECU) が動かしていました。しかも、最近の車両では、1台あたりのECU搭載数は100~150個にまで増えています。これ以上の数を搭載すれば、サプライチェーンの問題がさらに悪化してしまうと思われます。ECUの数が増えるほど、故障する場所の数が増え、保証コストも加算されることになります。
これら多数のECUにつながっているワイヤハーネスにも問題が伴います。自動車に搭載される機能の数が増えるのに伴って、ワイヤハーネスの配線長、コスト、重量が増していき、車両1台あたりのワイヤハーネスの重量は70kgを超えています。配線の重量がかさむことと、EVの航続距離を確保するために達成しなければならない車体の軽量化とは、相対する要素です。
ハーネスの簡素化
このような懸念に対処するため、自動車メーカー各社は、従来よりも数は少ないけれどもパワフルなECUを使用した、ゾーナルアーキテクチャへの移行を進めています。車両上を複数のゾーンに区切って制御するこの方式では、各ECUが自身の近傍で動作している全機能の制御を担います。これにより、車両1台あたりECUの総数を、これまでの100個以上から10個ほどにまで減らすことが可能です。これは、昨今の半導体不足に対する素晴らしい解決策ともなります。
ゾーナルアーキテクチャでは、各ゾーンに置かれたECUは、ゲートウェイを介して、車両の中心部で全体の制御システムを司っている高性能コンピューティングクラスタに接続します。このようなアーキテクチャの構築には、より高速処理に対応した半導体チップだけでなく、高帯域ネットワークも必要です。このような要件を満たすのが、 高速FAKRA Mini (HFM) のような高速接続性能を持つ同軸ケーブルで、このケーブルは、ワイヤハーネスの配線の簡素化と大幅な軽量化にも貢献します。
このようなメリットがあるため、大手OEMが中央制御型のアーキテクチャに移行する意思をある程度示しているのも、意外なことではありません。事実、モレックスが世界規模で実施した調査の回答者のうち84%が、将来の自動車エレクトロニクスはゾーナルアーキテクチャの採用に進むと回答しています。
新たな車載機能をスムーズに追加
各ECUに固定した機能が割り当てられていた従来型のシステムとは異なり、ゾーン型のシステムでは、車両の様々な機能を、より柔軟で小規模なECUのセットに集約します。したがってこのシステムでは、ECUに割り当てる詳細機能はソフトウェアが定義します。
ソフトウェア駆動型の機能が増えるのに合わせて、メーカーが実施するソフトウェアの更新 (修正、新機能の追加) は無線 (オーバー・ザ・エアー、OTA) を使用した方法へと変化しています。市販までの時間が短縮できることも、ソフトウェア駆動型のメリットです。たとえば、車両の生産から出荷の段階では運転支援機能が細部まで完成していなくても、販売後に無線で詳細を書き加えることもできるようになります。
ソフトウェアが収集したデータをメーカーで分析し、インサイトを得ることも可能です。そして、この電子機器に関するインサイトを元に設計内容を改善して、従来よりも短期間で実車に適用することができます。
さらに、ゾーン型の制御システムでは、ハードウェアの更新すら容易になります。メーカーが行うセンサーや、モーター、その他コンポーネントの更新を、データ処理を担当するアーキテクチャに触れることなく行うことができるためです。新機能や制御パーツは、ゲートウェイ部分の追加や交換をすることなく、モジュール単位で追加できます。これにより、生産時間は短縮され、カスタマイズも簡単になります。
コストと重量の管理
ゾーナルアーキテクチャのメリットは、自動車の組立工程にも及びます。たとえばワイヤハーネスの組立ては、今も手作業で行われているため、コストのかかる工程です。手作業が必要な理由は、柔らかいワイヤハーネスをロボットハンドを使って精密に組み立てることは難しく、ロボットによる自動化と品質維持という手法をとれないためです。このような問題も、ゾーナルアーキテクチャに移行することで、規格で大量生産された配線を簡素なレイアウトで組み立てることができるようになれば、解消すると考えられます。
これからの車ではこのほか、電圧も、センサーやモーター、ECUその他コンポーネントを支えるために、これまでの12Vから48Vへと高電圧化します。電圧が高くなることで、同じエネルギーを伝達するのに必要な電流値は低くなりますから、ケーブルの小径化と軽量化が可能になります。同様に、EV用のパワートレインも高電圧のアーキテクチャに移行し、より高効率のコントローラと配線の構成となっています。
電気自動車を運転する際の悩みである航続距離の問題は、ケーブルやワイヤハーネスの軽量化、EV用バッテリーの小型化、空力性能に優れたボディ設計等によって解決し、航続可能距離が伸びることで外出中の充電の不安も解消して、普及も拡大していくでしょう。
課題とコラボレーション
ゾーナルアーキテクチャへの移行は、自動車生産に大きなインパクトを与えると考えられ、イノベーションが加速し、アダプティブコントロールや安全機能がますます充実していくと考えられます。ただし、移行を成功させるには、スムーズで、ロバスト、セキュアな[安定性、堅牢性、信頼性に優れた]接続を確保する高速データ接続技術が必要となります。
強風や雨、絶え間ない衝撃や振動にさらされる環境で、このような安定した性能を維持するのは簡単なことではありません。車載電子部品が置かれる環境条件は、たいへんに厳しいもので、特に高速データ通信用ケーブルには多くの課題があります。
先進運転者支援システムや自動運転システム用に搭載数を増やしているセンサーやカメラは、高速処理しなければならない膨大な量の情報を生成します。振動によって、転送速度1 Gbpsの接続が一瞬途切れただけでも、かなりの量のデータを喪失します。安全制御機能の自動化がもっと進むにつれ、振動リスクを克服できる機能を備えたコネクターを作ることが必要不可欠になります。
セントラルコンピューティングクラスタ用のコネクターにはこのほか、従来の基板対基板型コネクター製品よりもはるかに高い耐久性と、極数、パワー用のピンが必要になります。したがって最近のエンジニアは、モジュール交換に対応し、生産工程の簡素化に寄与し、そしてアップグレード対応の容易なコネクターの標準化を計画しています。
モレックスは、メーカーおよびTier1サプライヤー各社と密接に協力し、弊社の世界トップクラスのシグナルインテグリティ技術を活かして、過酷な道路条件上でも安定して電力と高速信号を伝達可能な、新世代のハイブリッドコネクター (Mixedコネクター) を設計しています。この新たなコネクターは、信頼性と安全性の向上に加え、信号線と電力線を統合したことで接続点数を減らし、取り付けも容易になっています。
また弊社では、ハイブリッドコネクターと並行し、スマートフォン等のアプリケーションで得られたマイクロミニチュアコネクター分野で蓄積した知見を、セントラルコンピューターからカメラモジュールにまで適用可能な、超小型で高帯域対応の基板対基板用接続製品の開発にも活かしていく考えです。そして最終的には、次世代EVアーキテクチャの全体的な効率向上の実現に貢献していきたいと考えています。